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2012年1月30日 (月曜日)

田中慎弥さん

 田中慎弥さんこそ、ひきこもりの王者と呼ぶのにふさわしい。20年に及ぶ無職ライフを経て、芥川賞作家になったのです。ひきこもりが空想することはできても、実現できなかった、逆転ホームランをかっとばした、我々のプリンス。まだ会見を見てない人がいたなら、動画でご覧ください。

 ばーん、どうよ。20年間、太陽の日差しをあびなかった者だけが手に入れられる、もやし色の肌。バニラ色。瞳孔ひらきっぱなしで、キョロキョロする姿は、ある意味、鏡にうつった自分の姿。周りの人から見れば自分も、こんな感じなのかなと心配する男子がたくさんいたと聞いております。これを見て笑ったり、態度が悪いと怒る人は、ひきこもり当事者とは言えない。

 我々のような凡夫がこのような態度ではけしからんですが、小説家なのです。泥酔で会見に挑むくらいが、無頼でかっこいい。ワイン二杯しか飲まず、がちがちに緊張し、キョロキョロしている慎弥は、ジェントルマンすぎるのさ。石原チン太郎の悪口をまぜながらの会見は、新芥川賞作家として百点、お行儀のいい、感謝の言葉しか言えないような小説家にみんな飽き飽きしているのです。

 この会見が話題になりテレビでも大きく取り上げられました。本も発売と同時に増刷10万部、過去の作品もばんばん売れている。慎弥くんも想像以上の反応に、喜ぶと同時にちょっとびびって、部屋でワインをちびちび飲みまくっているに違いない。出版社も含めて誰もがうまくいったと思っているところに、「意義あり」と高らかに声をあげるものが現れました、ひきこもり息子を女手ひとつで、苦労して育て続けたお母さんこと、慎弥ママン(田中真理子)です。

週刊文春

 週刊文春2/2号に、真理子さんこと慎弥ママンのインタビューが載っています。タイトルは「息子は上がり性ですから……」。テレビで息子の会見を見て、驚いた慎弥ママンは、息子は本当はやさしい子だと訴えるのです。「緊張していたんですよ」「もともと上がり性」「照れ隠し」「お酒を飲まずにいられなかった」「普通の子でした」「忘れ物が多かったです」「兄弟が欲しかった…でもグレたりはしなかった」「大学に失敗した…」「勉強してないんだから、受からないんですよ」。

 異才の新芥川賞作家として世に出た慎弥くんを、緊張していただけの普通の子と、ばっさりと切って捨てるあたりがママンの恐ろしさです。頭が悪くて、気の弱い息子と信じて揺るがない。慎弥くんが、阿修羅フェイスで、部屋の壁を蹴っとばす音が聞こえてきそうです。

 真理子の息子自慢はエスカレートしていきます。「お金を入れてくれるようになって助かっている」「私も年金ありますから」「今回の『共喰い』は結構面白かった」「一時は忙しいでしょう…」「朝一緒にご飯を食べ」「テレビでお笑い番組なんかを見ながら飲んでます」「もう四十になるので、飲み過ぎは困るんです」。

 慎弥くんが、少ない原稿料からせっせと家にお金を入れているという、垢染みた貧乏美談が、ママンの口から語られます。息子の受賞作は、結構面白い、と評論家気取りです。慎弥くんが築き上げた、傲慢不遜、無頼な新進作家のイメージも、親孝行なひきこもり息子というしみったれたものにまで、縮小したような気がします。こんなママンはいかがなものでしょうか。ひきこもりの親が、息子にやってはいけないこととはどういうことなのか、それを知るための第一級の資料として、2/2号の週刊文春を私は推薦します。

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コメント

せっかく、孤高の無頼派として売っていこうとしてたのに、その戦略を無駄にするママン。
空気読めない感じが素敵です。
会見でいきがる田中氏と書くよりママンのコメント載せる方がより強く読者に悪意を伝えられますからね。
会見にほろ酔いで臨む姿は、まさしく俺達の慎弥くんですなぁ。

投稿: コーラス | 2012年1月31日 (火曜日) 12時38分

ひきこもりの中には本を出して作家になりたい・社会に認められたいと思う人がいると思います。
でも、田中さん、勝山さんらカリスマひきこもりのように、文才、理解ある親などのスポンサー、ネタやコネ、運がなくて結局諦めないといけません。

数々の難題をクリアしてひきこもり系社会参加を成功させた田中さんを上げて落とすとは、ママンの攻撃恐るべしです。

投稿: 210 | 2012年2月 1日 (水曜日) 10時00分

田中慎也氏の炎上マーケティングが大成功ですね!
ヒキキャラにしては、異様なフューチャーのされ方ですから

狙ってやったというよりも、完璧に偶発的にでしょうが。

世間の「何様や!」「感じが悪い!」的な
評価とは別に、
個人的には、なにしろ、憎めませんね。
とてもシャイで、照れ隠しにしか見えません
から

われらの(?)慎也くんが、起死回生の
ホームランを放ったのです。

全国の引きこもりに夢と希望を与えたのです

投稿: ヒルティー | 2012年2月 1日 (水曜日) 19時53分

ママンにインタビューすればこうなってしまうと
分かっいたのだから、週刊文春の記者に罪がある。

運や才能も、ママンの余計なお世話の前には
無力なのです。怖ろしいことです。

狙った炎上が、想像以上に燃え上がってしまい
慎弥くんもびびっとるんじゃないですかね。

投稿: 勝山実 | 2012年2月 3日 (金曜日) 00時40分

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